25 January 2008

彼らの流儀

午前中、休みをもらってビザ更新の手続きをするために外国人管理局、SEFへ。昨年10月に一度書類を集めて提出しに行ったものの、社会保険に関する書類がなく、出直しする必要があった。その仕事ぶりに関して悪名高き社会保険庁に請求した書類は、発行まで1ヶ月以上かかってしまう(その間、社会保険庁に出向いて一度催促していることを考えると、この国では待っていても事が進まないことがよく分かる)。年末の帰国やコンペも相まって、すでにビザが切れて3ヶ月以上が経過していた。罰金40ユーロを払って、今回は書類が受理され、何とか無事手続きを完了。

このSEFも、社会保険庁に負けないくらいの混乱ぶりを行く度に見せてくれるが、実は年々改善されてきている。僕が初めてポルトガルでビザの更新を行ったときは、午前7時くらいから並んだにも関わらず(その時点で長蛇の列だった)、自分の番が来て手続きが完了するまで約10時間くらい待ったのを覚えている。今ではSEFでビザ更新(昨年夏から滞在証という名前に変更)の手続きをするには前もって電話での予約が必要で、以前ほど待たされることはなくなった。といっても、電話で予約しようにもたいていが話し中で、20回程かけてようやくつながるので、相変わらず「根気」は必要とされる。

ようやく電話で予約ができたら、それはようやく戦場に立ったということを意味している。といっても敵はSEFの職員ではない。周りの外国人達だ。まず、例の電話予約がなかなかできない、と訴えているパキスタン人が必ず数人いる。電話予約が必要であることを知らずに整理券をもらおうと並ぶアンゴラ人が列の50%程度を占める。自分の順番を待てない年配の女性が度々受付の職員に、自分の順番はまだでしょうか、と尋ねる。ブラジル人女性が書類の不備を指摘されて、私に責任はないわ、と叫ぶ。

こんな移民たちと付き合っていられない。そこでSEFは妙案を思いついた。職員にリーガルな移民を割り当てればいい。つまりブラジル人やアンゴラ人、あるいはウクライナ人が手続きの対応に当たるのだ。例えば今日は、アフリカンナイトならぬ、アフリカンデーといった感じで、受付担当の職員は全てアフリカ系の移民であった。これによって、職員と、書類をもってくる移民たちとのコミュニケーションはずっとスムーズになっている。

しかし、この移民が担当している手続きは、最初の書類確認であり、その後、最終チェックの段階が待っている。そしてそれを担当するのはポルトガル人。つまりそこが移民たちとポルトガル人の最終決戦の場なのだ。一度書類チェックをパスしたにも関わらず、この段階で書類の不備を指摘されることもしばしばだ(僕も前回はここではねかえされた)。そのときのやるせなさは相当なものだ。ここで、しばしば壮絶なバトルが繰り広げられる。そうなると、手続きは一向に進まなくなり、自分の順番はなかなか回ってこない。

そこでSEFは、商売が繁盛するように置かれた旅館の招き猫のように、移民たちを落ち着かせるためにカウンターの脇に「柔和な表情をした」おばあちゃん職員を常駐させている。彼女はとても落ち着いた様子で、彼女に、座って待っていなさい、と言われると、先程まで怒りに任せて話していたブラジル人も、渋々とだが、席に着く。

移民たちも、ポルトガル人の職員たちも、双方が冷静に対処すればもっと手続きはスムーズに進むはずである。でも、人の性格や気性は変えられないから、彼らは彼らの方法で事を進める。ちなみに、何かの調査によると、ポルトガルはヨーロッパで2番目に、移民との統合がうまくいっている国であるそうだ(1番目はスイス)。