31 January 2008

コジーニャ・ブラジレーラ

ブラジル人の銀行家がクライアントの住宅プロジェクトで、こちらが提案するキッチンをクライアント夫婦は受け入れてくれない。提案しているのは、アイランド式のキッチンがそのままダイニングルームに延長できるようなもので、ダイニングとリビングは同じ空間にある。食事をしながら、あるいは料理をしながらリビングルーム越しに外の景色が見えてなかなか気持ちがいいと思うのだけれど、彼らは、キッチンを壁で囲うことを要求する。

でも、今あるプランでキッチンを壁で囲ってしまうといまいちしっくり来ないし、なぜ彼らがそれを望むのかが理解できない。ゴンサロとあれこれ悩んで、ブラジル人建築家ヴィラ・ノヴァ・アルティーガスの作品集を見ていると、キッチンがしっかりと壁で囲われているプランをいくつも発見する。分析するに、彼らは、よくブラジルのテレビドラマで目にするように、家政婦を雇うのが当たり前で、キッチンで料理をするのは全て、家族ではない「他人」の家政婦であり、キッチンとリビングはしっかり区切っておきたい、というねらいがあるようだ。

さらに、図面を分析していくと、家政婦と家族の動線はできるだけ別になるようにしてある。ポルトガルにおいても、家政婦を雇うというのは割と一般的なことのようだけれど、家政婦の需要の少ない日本ではあまり馴染みがない。家族が家政婦とどれくらいの距離をもって接しているのか、そしてそれが家のプランに実際にどう影響してくるのか、それを理解するには少し時間がかかる。そしてその関係を理解した結果、なぜ彼らが家政婦を雇うのか、僕には理解できない(彼らは掃除することを面倒くさがって家政婦を雇うが、雇った家政婦は結局彼らにとって面倒な存在なのだ)。

ブラジルではポルトガル以上に動線分けがはっきりしていることがアルティーガスの作品集、あるいはクライアントの要求から分かる。他にも、キッチンの補助スペース「コパ」が明確に図面に現れていたりするのも特徴だ。