04 January 2007

ポルトガルのテレビ

僕はテレビがなくても生活できるというタイプの人間ではないから、例えそれが全て外国語によるものとは言え、部屋のテレビは常につけっ放しだ。もちろん、時々テレビを消して、ラジオをつけたり、CDで音楽を聴いたりするのも好きだ。でもやっぱりテレビは欠かせない、たとえポルトガルのテレビ番組の大部分がつまらなくても。

ポルトガルのテレビがつまらないな、と思うのにはいくつか理由がある。例えば、夜仕事から帰ってくる時間帯に毎日性懲りもなくやっているクイズ番組。以前(3年前くらい)はミリオネアをやっていたが、今ではそれをちょこっと改造したようなのをやっている。まあ、これはまだいい。

このクイズ番組はRTPという日本のNHKのようなテレビ局がやっているが、RTPはまだいい。問題はその他の民放2局だ。毎日、明らかにレベルの低い「連ドラ」をやっている。素人目にもカメラワークが下手だと思うし、話をつなぐテクニックがないのか、ごまかしの映像テクニックで3分おきくらいに突然話の場面が切り替わる。ブラジル産より、ポルトガル産のドラマが見ていてひどい。

最もひどいと僕が思うのは、これら民放2局で流れるCMである。ちょっと時間帯が遅くなれば、ケーブルテレビでよく見かけるような、携帯の出会い系サイト、ポルノサイトの広告が次々と流れるのだ。この手の産業にあっけなく広告枠を奪われてしまっている。広告に関して言えば、ドラマの最中に、SMSを送って賞金を当てよう、といったテロップが流れ続けるのにも閉口する。(しかもアンケートなどではなく、ただSMSを送れば良い。視聴者をつなぎとめる最も安直な手段だ。)

他にも出演者が常に同じであったり、アメリカやイギリスのテレビショーが大量に流れていたり、全体的にポルトガルのテレビ局には創意工夫が欠けるのだ。他国のテレビ局と比べてお金がないのだろうが、お金がなくてもいろいろと工夫はできるはずである。ポルトガル人はテレビ好きを自認するが、それならもっとテレビに情熱を注いでほしいと思う。僕はリスボンにいるのでポルトガルに地方局があるのか知らないが、「地方発、全国区」のようなテレビ番組が出て来ないものだろうか。

そんな中、RTP2(日本のNHK教育に相当)は海外の興味深いドキュメンタリーを放送しているし、RTP1にも「Gato Fedorento」のようなポルトガル語を完全に理解できればかなり笑い転げるであろうコメディショーもあり、ポルトガルのテレビはおもしろくなってきている気はする。中でも僕がいいな、と思うのは、「Dança Comigo」(RTP1)。お隣スペインにほとんど同種の番組があるのでそこから持ってきたのだとは思うが、これは日本の「のど自慢」的番組で、素人のポルトガル人がダンスを習得して番組で披露するというものだ。そこには、ポルトガル人でも踊れない、飛べない鳥もいるという背景がある。そして、普通のポルトガル人が、少々ぎこちなくても、その気になって踊るのは、見ていて微笑ましくなる。なあんだ、踊れない人もいるんだ、と僕を含め多くの人に勇気を与えてもいる。披露後の審査員とのやりとりや、プロのダンスショーなども含めてエンターテイメント性に富んだ番組だ。

こういう番組が他にもあるかもしれないから、やはり、テレビはつけっ放しにしておかねばならない。