先々週末、マリアのボーイフレンドのキリオと、キリオの友達のルカと『The Passenger』という映画を見に行った。監督はミケランジェロ・アントニオーニで、ジャック・ニコルソン主演の映画。制作は1975年のようだ。
ミケランジェロ・アントニオーニの映画を見たのはこれが初めてだったけれど、とても好きな映画だった。妻から、仕事から逃げる、という話なのだが、とてもゆっくりとしたテンポで映画は進む。舞台の大部分はスペインで、バルセロナから南の方へとレンタカーで逃げて行く。途中、まだ修復の十分でない薄汚れたカサ・ミラ(そこでジャック・ニコルソンとマリア・シュナイダーが出会うのだが)が出てきたりして、当時のバルセロナの雰囲気も興味深い。バルセロナからアンダルシアのマラガに至るダイナミックなランドスケープを背景にすると、途中に転々とする豪華なホテルのせいもあって、それが逃走劇ではなく、バカンス中の優雅なドライブに思えてくる。安宿の一室から定点で撮影されたラストのシーン、視点が動かないからこそ、追っ手が迫り来る緊迫感、逃げられないというあきらめ、そして逃避行が終焉するという若干の安堵を同時に感じる。このラストシーンは秀逸だと思った。