「Santos Design District」と銘打たれたサントス地区には、建築、ランドスケープデザインの事務所、家具、インテリア関係のショップが多く集まる。僕が働く事務所もそこにあるわけだが、このサントス地区にはおいしいレストランも多い。サントス周辺のレストランが、僕のポルトガル料理に対するイメージをいいものにしていると言っていい。「ポルトガルで食べる牛肉はおいしくない」という発言を撤回せざるを得なくなったのも、ここサントスでの話だ。
昼休みのたっぷりあるポルトガルにおいて、昼食は大きな楽しみだ。午後1時半になると、事務所の仲間4、5人とレストランに出かける。魚料理から肉料理まで日々いろいろなものを食べているわけだが、最近僕がはまっているのが、パタニスカスだ。これが日本の「さつま揚げ」と全くと言っていいほど同じだ。パタニスカスを初めて目にした時、あまりにも外見がそっくりなので「あっ」と声が出そうになった。さつま揚げに負けず劣らず素朴なおいしさで、パタニスカスの方が魚の存在感大だ。たいていフェイジョアーダやリゾットが横に添えられて出てくるが、このコンビネーションもなかなかいい。
ところでこのパタニスカスとさつま揚げの関係は大いに気になるところだ。そもそも「さつま揚げ」が「薩摩」出身なのかどうか知らないが、もしそうであれば僕は「パタニスカス」がポルトガルから日本へ伝わった数多くのものの一つなのではないかと踏んでいる。何しろ九州にはそういう食べ物が多い。博多の鶏卵そうめんや長崎のカステラは有名な話だが、佐賀県にも「北島の丸ぼうろ」がある。この「ぼうろ」は(確かめたわけではないが)明らかにポルトガル語の「bolo、ケーキ」から来ている。丸いケーキというわけだ。だから、「さつま揚げ」が九州薩摩で盛んに食されていたのであれば、ポルトガル人が鉄砲やキリスト教とともにパタニスカスを伝えたのかもしれない。
僕がゴンサロに説明すると、絶対それポルトガルからだぜー、と言って満足そうな笑みを彼は浮かべた。たまにこういう話をすることが、ポルトガル人とうまく付き合っていく秘訣でもある。