11 September 2010

2つの事件

ポルトガルではここ数日、2つの事件がメディアを賑わせている。カザ・ピアにおける児童に対する性的虐待事件と、サッカー・ポルトガル代表監督カルロス・ケイロスの解任問題だ。

カザ・ピアは社会的不遇にある子供達を集めた教育機関で、これまで数々の政治家やジャーナリストを輩出していた。しかし、1970年代より児童に対する性的虐待の疑惑があり、2002年頃よりメディアで大々的に取り上げられるようになる。そして、2004年より始まった裁判が今月始めついに決着を見せ、7人の被告の内、6人が有罪、最高で懲役18年の判決が言い渡された。被告の中には、テレビ・パーソナリティ、外交官、政治家などが含まれており、ポルトガルのメディア史上最大のスキャンダルとも言われた。

それに比べれば、代表監督の問題など些細なことではあったが、EURO予選でホームのキプロス戦で4-4という手痛い引き分け、アウェーのノルウェー戦でゴールキーパーのミスによる失点がそのまま決勝ゴールとなり0-1で敗戦、と苦戦が続く中、ポルトガル国民も黙っていられなくなった。ついに先週末にはポルトガル・サッカー協会が混乱を招いたカルロス・ケイロスの解任を決めた。後任候補として、元スポルティングのパウロ・ベント、前回EURO優勝監督のスペイン人ルイス・アラゴネスなどの名前が出ているが、モウリーニョの「ポルトガル人監督が望ましい」という言葉に代表されるようにパウロ・ベントが有力と思われる。

ケイロスはルイ・コスタやフィーゴなどのポルトガルの黄金世代を率いてユースで世界一になるなど、ポルトガル・サッカー界では一目置かれる存在だった。前回のEURO後、僕はタクシーのラジオでケイロス就任のニュースを聞いたが、それはとても期待に満ちた調子で伝えられていた。それだけに、ワールドカップ予選から続いたポルトガルの不振の責任を押し付けられ、アンチ・ドーピング協会への暴言の責任を問われる中、物腰柔らかな紳士ケイロスの評価が地に落ちていく様子は見ていて気の毒ではあった。