モンフェリという町に一風変わったエルミータがあるというので見に行く。タラゴナから北東へ車で約30分、オリーブやヘーゼルナッツの木、そしてぶどう畑の点在する風景の中に突如としてエルミータはその姿を現す。全くの予想外の外観に思わず身を乗り出す。しかし、同時にどことなく親近感を覚える外観でもある。中に入り、このエルミータの建設過程のパネルに載せられた一枚のスケッチを見て、あっ、と思う。
エルミータ建設の構想は1922年に始まり、1925年より建設が始まる。政治的、経済的理由により1931年に建設は中断されたが、56年後に再開され、それからさらに12年後の1999年に遂に完成する。エルミータにはカタルーニャの守護聖人である黒い聖母、モンセラットの聖母が祀られ、外観もモンセラットの山をモチーフにしたデザインである。設計を担当したのはガウディの弟子として有名なジョゼップ・マリア・ジュジョール、とある。そこで僕の記憶の点と点が結ばれた。
高校生のころ、スペインのモデルニスモ建築に関する本を学校の図書館で偶然手にとって読んだとき、そこにこのスケッチが未完のモデルニスモ建築の一例として載っていたのを思い出した。それが建設途中であるということが書いてあったどうかまでは覚えていないが、まさかモデルニスモのプロジェクトが、サグラダ・ファミリアの例はあるにしても、現代になってしかもこの10年の間に建設されるとは想像だにしなかったのである。