04 January 2006

元旦


大晦日に夜更かししたせいで、起床は午前11時過ぎ。セシモさんはこれから走ってくるという。確かに彼の家の近くには朝走るのに良さそうな川沿いの場所がある。セシモさんが走っている間にシャワーを借りる。しばらくするとセシモさんが帰ってきて、セシモさんがシャワーを浴びた後いっしょにベランダで朝食を頂く。

朝食の後、シザ事務所を見学。セシモさんが担当しているプロジェクトを始め、進行中のプロジェクトを紹介してもらう。リスボンのシアド改修プロジェクトがまだ続行中であることを聞き驚く。そういえば確かにあの中庭の突き当たりからカルモ教会前の広場と接続する階段が図面にあったのを思い出す。確かにそうなったら今よりずっと良くなるし、おもしろい。セシモさんのデスクからはアラビダ橋が見えた。オフィスからの眺めが良く、羨ましい。

その後、2年前にできたポルトのメトロを見学に行く。ポルトはダリアン、ステファニーとともに、昨年4月末に一度訪れていたが、その時はなぜかこのメトロの存在を完全に忘れていて、バスで回っている。圧倒的にメトロの方が便利だ。ポルトのメトロは4つのラインがあるが、シザが担当したサン・ベント駅以外、そのほとんどの駅をソウト・デ・モウラが担当している。その時はソウトの事務所に「メトロ部門」があって、9人の所員さんが担当していたそうだ。その全駅に大量の淡いブルーのタイルが使用されているのだが、それがとても鮮やかな色をしている。クールな印象を与えつつも、暖かみも感じるという絶妙な色だ。それらのタイルは一枚一枚、職人さんが手作りで仕上げたというが、そのおかげで一時期は潰れかかっていたそのタイル作りの小さな村が持ち直したという逸話も残っている。

いくつかの駅をセシモさんの解説とともに見て回ったが、僕はカーザ・ダ・ムジカ駅が印象に残っている。自然光(間接光)の入る地下鉄の駅なんて今まで見たことがなかった。地下鉄のホームで自然光を感じることできるとは、なんて素晴らしいのだろう。ソウトは他のいくつかの駅でも自然光を取り入れていた。

このクールな地下鉄駅を走り抜けるのはドイツ製のピカピカの車両で、なんだかホームで待っているポルトガル人まで先進諸国の人々に見えてくるから不思議だ。このメトロは地下から地上に出て、さらにあのドン・ルイス1世橋の上のレベルを渡って、川の向こうまでつながっている。これだけでも素晴らしいのだけれど、ドン・ルイス1世橋の上のレベルを地下鉄の線路のすぐ横を人々が歩いて渡っている!こんなところを歩いて渡れるなんて!橋を渡りきった所の駅で降りて、帰りは歩いて橋を渡る。たそがれ時になると身支度をしてまっすぐ家へ帰るため「たそがれポルトガル人」と僕に揶揄されるのだが、そのたそがれ時がポルトガルは美しい。久しぶりに見たポルトの夕景に感動して、思わずセシモさんに、

「こんな素晴らしい眺め世界中探してもないですよ!」

と言う。すると、ポルトに少々お疲れ気味のセシモさんもちょっとうれしそうに、

「そうですよ、こんなのないですよ!」

夕食は、フランセジーニャ。「小さなフランス人の女の子」という名のミーニョ地方の名物は、サンドイッチとフレンチトーストを足して2で割り、チーズを足してソースをかけた、かなりパンチの効いた代物。一度食べると、「じゃあ、次は半年後に」と言いたくなる程重たい。

セシモさんにバスターミナルまで見送ってもらい、午後8時発のバスでポルトを後にする。午前0時頃、リスボンの自宅に帰り着く。翌日の朝、僕は腹の底に「フランス人の小さな女の子」の存在をしっかり感じることができた。