昨日は小雨の降る中、事務所が設計した「社会コミュニケーション学校」を同僚レオネルと見に行ったのだけれど、学生証がないために中には入れなかった。良かった悪かったといった感想も持てないまま2人でぶつぶつ文句を言いながらメトロに向かって歩いているとき、
「今日、カレーを作ろうと思うんだけど、食べに来る?ネットで調べ物もしないといけないでしょ?」と僕が言うと、「何色のカレー?赤?緑?それとも黄色?」と聞いてくる。「まあ赤でも緑でもないから黄色かな。」と言うと、「ああ、一番いいヤツだね!」と適当にノリのいい返事をしてくる。チキンカレーを作ることにして、帰りにスーパーに寄って鶏肉とビールを買って帰る。
7月にアメリカ人のダリアンとやったTEXMEXパーティ以来うちに遊びに来たレオネルは、ポルトガルリーグのバスケットボールの試合を見始める。アントニオも家に居たのでいっしょに食べることになった。
「んー、NBAにはかなわないけど、悪くないね。何人かアメリカ人もいるね。」
とか、適当に感想を言いながら見ているレオネルをリビングルームに残したまま、僕はキッチンでタマネギを刻み始める。
「んー、ビールでも飲もうかな。」
バスケットボールの中継に飽きたレオネルはキッチンに来るなりそう言って冷蔵庫からビールを取り出す。「アントニオにもビールほしいか聞いてね」と言うと、「分かった。聞いてみる。」と素直にアントニオに聞きに行く。それからニンジン、ジャガイモを適当な大きさに切り、鍋でタマネギ、ニンジン、ジャガイモの順に炒めた後、水を入れて煮込み始める。
「んー、マトリックスと、バスケットの試合、どっちにしようかなあ。」
相変わらずレオネルはテレビに熱中している。途中、バターで炒めた鶏肉を鍋に加える。ジャガイモも十分柔らかくなったので、カレーのルウを溶かしてまたしばらく煮込む。リビングルームでは、何度も見たはずのマトリックスをレオネルが集中して見ている。牛乳を加えたいんだけど、冷蔵庫には賞味期限の切れた牛乳しかない。試しにちょっと飲んでみると、ちょっと酸っぱい。「ラッシーも酸っぱいしね」と自分に言い聞かせてカレーに牛乳を加える。
「あー、マトリックス終わっちゃったー。」
「そろそろ食べる?そういえば、ティアゴに借りたDVD見ようか?」
カレーを食べながら三池崇史監督の『極道戦国志 不動』を見る。「完全に気が狂ってるね、この映画。コピーしてよ。」とアントニオはかなり気にいった様子。バカ笑いしたり、苦笑いしたり、カレーを食べたりしながら映画を見る。3人でカレーを3回おかわりしたために、「まあ火曜くらいまで持つかな」と思ったカレーは全部なくなる。ブラジル人もポルトガル人も日本人も、カレーには目がない。
「アマゾンの密林で何が食べたくなるかというと、カレーライスだよ。」
「テージョ川がカレーだったらなあ。」
そんなことをそのうち彼らは言い始めるのではないかと思う程の食欲だった。