17 November 2005

ベレン宮殿・アーカイブ棟


今日は昼食後、ベレン宮殿(Palácio de Belém)を見学した。ここにあるアーカイブ管理棟をうちの事務所が設計している。ちょうどスイスの建築学校の学生がリスボンを訪ねてきていて、彼らがこの建物を見学するのに合わせて見学することになった。ここは一般公開されていないので、こういう機会がないと中に入れないようだ。いつも模型や写真を見ながら、ぜひ実物を見てみたいな、と思っていたので今日は絶好の機会だった。

実際に行ってみた感想だが、写真から想像していたよりもずっと良かった。このプロジェクトにいろいろとカヒーリョ建築の真髄が詰まっているように感じた。水平な白いボリュームが浮いているように見えるのが印象的だが、この白いボリュームを横から見ると、そこにダイアグラムのような断面が見える。白いボリュームと芝生の間のスリットから、その直前にある水面を反射して芝生の緑が建物の中に入ってくるような仕掛けになっている。正面から見ると、白い固まりだが、それを横から見ると、スラブや壁が入り組み、柱や階段が見えたりして、建物としての要素が見えてくるのだ。これこそカヒーリョらしい建築と言える。

またこの芝生の地面は元から存在したものではなく、芝生があることでそこが地表面のように見え、オフィスを配した本来のグラウンドレベルが地下のような印象を与えているのもおもしろい。

マテリアルについても、常に白くなければならない白い壁がある一方で、コールテン鋼のような時間の経過とともに味を出してくるような素材も使われていて、その色彩的な対比も含めてとても効果的だ。建物内部については、これ見よがし的なディテールがあるというよりは、そののっぺりとした窓枠をどうやって実現するのだろうと想像させるようなディテールがある。オフィスのある廊下では、その片側の壁にだけ淡いグリーンを配し、もう一方は真っ白な壁だが、淡いグリーンがトップライトを受けて廊下全体をぼんやりと薄緑のかかった空間にしている。敷地内に放し飼いされた数羽の孔雀が、この場所に非現実的な、不思議な雰囲気を作り出してもいた。