去年の5月から続けて来たポルトガル人建築家へのインタビュー収録がついに完了した。最後のソウト・デ・モウラへのインタビューを実現するのは、なかなか一筋縄にはいかなかった。今年のプリツカー賞受賞者である彼が多忙であることは容易に想像がついたが、殊更、僕たちのような名もなき若い建築家が約束を取り付けるのは簡単ではなかった。とにかく僕らは後回しにされつづけ、辛抱強く待たなければならなかった。それまでの7つのインタビュー収録が、ほとんど問題なく順調に進んでいたことを考えると、それは僕たちに与えられた「試練」と思う他になかった。
しかし、この待ち続ける期間に本当に多くのことを学んだと思う。それは「個人」で活動することが何たるかをまざまざと見せつけられたからだ。会場探しから協賛金集めまで、僕たちはその難しさを痛感せずにはいられなかった。他人頼みではなく、自分たちが何とかしなければ、という当然のことを言い聞かせる必要があったし、他人に自分たちを信用してもらい続けることも重要だった。何より一緒に活動している仲間を信頼し、彼らから信頼してもらうことも重要であった。だから、自分という人間のコミュニケーション能力、あるいは人間そのものが試されていたと言って良い。
編集、レクチャーの手配、会場設営など、これから乗り越えるべきハードルは数えきれないほどだが、一つの重要な区切りがついた。