05 April 2010

ランプレイア

部屋とキッチンを掃除して、洗濯機を一度回しても約束の時間までまだ随分とあるので、読みかけの小説を持って公園に出かける。僕の住むカンポ・デ・オウリケを少し下った所にあるこの公園には理想的な日曜日の雰囲気が漂っていた。走り出す小さな女の子の後ろには娘を追いかける母親がいて、走る先には父親がいる。サングラスをかけた女性は辞書のような分厚い本をもって芝生に寝転び、連れの男性はビールを片手に公園の様子を眺めている。僕も芝生に腰を下ろして公園に来る途中で買ったサンドイッチを頬張っていると、

「ここは何と言う公園ですか?」

とドイツ人の若い女性二人組にたずねられる。エストレーラ公園、と答えると、彼女らは満足したのかそのまま芝生の上に横になった。サンドイッチを食べ終わると、持ってきた読みかけの小説を読み始める。この本は部屋を掃除しているうちに見つけたものであった。本を読み進めて顔を挙げると二人組の女性にはさらに二人の女性が加わり、次に本から顔を上げたときには彼女らは僕の目の前からいなくなっていた。そのうち、日向であったはずの場所は日陰になり、僕も腰を上げて公園を出た。

今日は友人とカタプラーナを食べる約束であった。ついでにそこの店にはランプレイアが置いてあったので、それも注文した。ミーニョ風とボルドー風があって、ご飯が別かいっしょかの違いだけであったが、ご飯が別のボルドー風にした。その方がお腹がふくれないという友人の知恵であった。ランプレイアは日本では八つ目うなぎと呼ばれるもので、日本でも蒲焼きなどにして食べるらしいが、普通のうなぎとは全く似て非なるかなり外見の醜い動物である。しかし、味はうなぎとほとんど変わらずおいしかった。ボルドー風の名の通り、フランスを始め、ポルトガルやスペインでよく食されているらしい。カタプラーナの方が圧倒的においしかったのだけれど、僕の頭からはこのランプレイアの気持ち悪い吸盤状の口のイメージがずっと離れなかった。ランプレイアは他の魚の腹に吸い付いて、ヤスリのような歯で表面を傷つけて血や体液を吸い取るのだ。