15 September 2007

建築家のバックグラウンド


本来なら今日は朝からホリエくんといっしょにアルガルベのタヴィラへ行くつもりだった。しかし、金曜日になってフランシスコに日曜日にミーティングを入れられてしまい、僕の都合で旅行は取りやめになる。そして今日は完全休養日にして、家でゆっくりと過ごす。そしてネットサーフィンをしているうちに、アクターに勤める日本人編集者のインタビューに辿り着く。「JPG1(Japan Graphics 1)」に続き、「JPG2」の編集を担当した坂本知子氏の話しであった(詳しくは、PingMagを参照)。その中で、最近の若手日本人デザイナーの傾向として、「浮世絵や和服などの伝統文化をDJのようにミックスして、新しいものだけでなく古い文化も取り入れ」、「日本人グラフィック・デザイナーとして見られることをとても強く意識してい」るとのこと。そしてそういった流れは海外在住の日本人アーティスト、あるいは、日本在住の外国人アーティストが作り出していったというようなことが書いてあった。つまり、彼らのようなデザイナーの存在が、日本の文化的背景を意識的に抽出し、現在の日本のグラフィック・デザイン界に欠かせない要素になっているということだ。

その国にあるバックグラウンド、ということについて言えば、僕も最近ポルトガルにいてそのバックグラウンドを発見することがあった。夏休みにトマールのキリスト修道院を訪ねたのだが、そこは、次々と増築されていった中庭と回廊が迷路のような空間を作り出しており、僕はそれに感銘を受けた。計7つの中庭と回廊があるのだが、その中に「洗濯の回廊」という名の回廊が存在し、そこで僕は中庭、そしてそれに伴う回廊にきちんと機能が割り当てられ、必要に応じて増築されていくものだということを知った。

カヒーリョのプロジェクトで、セトゥバルの「イエス修道院の修復・美術館転用プロジェクト」がある(資金難で着工までには至っていない)。既存の修道院に隣接して「中庭」という「負」の空間を付け加えたところが、増築の概念としておもしろいと思っていたが、トマールを訪ねた後、この中庭の増築は、修道院にしてみればごく自然の行為であったと言えることに気が付いた。ポルトガルの建築家が、そのバックグラウンドから(無意識のうちに)導いた秀逸な回答であると言えるだろう。

(写真はイエス修道院の修復・美術館転用プロジェクトの模型。カヒーリョ・ダ・グラサのウェブサイトより。)