25 February 2012

オモロガシオン

知人より要望があったので、オモロガシオンについて書いてみようと思う。オモロガシオン(homologación)とは、スペインにおいてスペイン国外の大学で取得した学位を認定してもらうプロセスのことである。このことは、吉村さんの地中海ブログにも詳しく書いてあり、僕も参考にさせて頂いた。

そこにも書いてある通り、なぜこのような海外での学位認定にこだわるかというと、海外で専門職に就く場合、原則、現地の大学での卒業資格が必要とされるからである。スペインで建築家として仕事をするには、スペインの建築系大学の卒業資格が必要となるわけだ。

では、実際にどのような手続きが必要なのだろうか。備忘録をかねて自分の経験を記しておこうと思う。

申請までには、概ね以下のような手順を踏む。

01.出身大学の卒業証書、成績証明書を揃える。このとき、卒業証書は、卒業時に授与されるオリジナルが必要になる。「卒業証明書」など、卒業後に教務課から発行される書類は無効。
02.文部科学省に自分が卒業した学校証明を出してもらう。大学法人化前の私立大学、大学法人化後の全ての大学を卒業した場合に必要となる。
03.学校証明、卒業証書、成績証明書のアポスティーユを外務省でとる。
04.学校証明、卒業証書、成績証明書をスペイン語に翻訳する。翻訳者はスペイン政府公認の者に限る。
05.外務省からアポスティーユされた各書類を、スペイン語訳とともに在日スペイン大使館に提出し、スペインにおける法的根拠のある書類として認証してもらう。
06.銀行で申請料をスペイン教育省宛に振込む。100ユーロ弱。
07.振込証明書と全ての書類を最寄りのスペイン大使館にて提出。

このように、大部分が書類の「認証」を取る手続きであることが分かる。しかも、海外に居ながら各書類を揃え、さらに書類の認証を申請するとなると、その過程はより複雑になる。なぜなら大学や外務省など、海外からの郵送での申請、あるいは海外での受け取りを認めていない場合が多く、その都度、委任状などが必要になってくるからだ。しかし、書類さえ揃えれば確実に申請可能なので、根気よく書類を集めることだ。無論、日本で申請すれば手続きはずっと楽であろう。

翻訳に関して気がついたコツを一つ挙げるとすれば、書類を可能な限り「英語」で出しておいてもらうことである。なぜなら、英語からスペイン語に翻訳出来る人の方が、日本語から翻訳する人よりもずっと多く、翻訳料を抑える事ができるからである。そして翻訳に要する期間が短くなることも予想できる。英語であろうと、日本語であろうと、大学から発行された書類の正統性に変わりはない。

さて、無事申請ができたとしても、教育省より回答が来るまでどれくらいの期間を要するか、気になるところである。それは1年と言われたり、2年以上と言われたりする。私もその点が気がかりではあったが、出しておけばいつか返事が来るだろうと、気長に構えていた。しかし、教育省からの返事は予想に反して早かった。私が申請したのは2011年の5月末。そして、教育省から返事が来たのは同年の9月末である。したがって、4ヶ月で返事が来たことになる。

いずれにしろ、教育省からの回答内容が最も重要なことであるが、吉村さんのブログにも書かれているように、日本と欧州で教育のバックグラウンドは大きく異なるので、まず条件なしに認定されることはない。建築史の授業を履修すること、とか、卒業設計を履修すること、などの条件が課される。私の場合の回答はこうだった。

「卒業設計を履修し、設備、構造、都市計画に関する知識があることが分かるような設計プロジェクトを提出すること」

これはちなみに「仮」の通知書である。その決定に対して異議がないか、確認するための通知である。決定に異議がある場合はその旨連絡するよう書かれているが、結論から言えば異議がない場合もその旨を返信する必要がある。こちらからの返信を待って最終の通知書が送られてくる。私はこの異議がない旨を返信する必要はないと思い込んでいたために返信が遅れたが、返信をして約1ヶ月で最終の通知書が届いた。本来であれば、仮の通知が出された日から2週間以内に返信をしなければならない。この後、スペイン国内の大学を選択し(選択自由)、実際に必要科目を履修していくことになる。

数年の覚悟をして臨んだけれども、申請から延べ約半年と、思いのほか早い段階で回答を得ることができた。しかも卒業設計のみという、普通にやれば1年でクリアできる条件であった。実務を経験してきた者としては、それほど難しいことではないと言えるだろう。

これはあくまで私がオモロガシオンを申請したケースであり、個人差はきっとあるだろう。ちなみに私は修士の修了証明もあわせて提出している。これが裁定に勘案されている可能性はある。また、ポルトガルのスペイン大使館にて申請していることも他のケースとは異なる点であり、回答までの時間にもしかしたら関係しているかもしれない。

同じくオモロガシオンを申請しようと考えている知人に私の経験を話したところ、インターネットのブログや掲示板に書かれているケースよりも早く返事が来ている上に、卒業設計のみ、とハードルがそれほど高くないことに驚いていた。彼自身、非常に条件の厳しい、気の遠くなるようなプロセスであると認識していたようで、そうでもないことに拍子抜けの様子であった。そして私に、後人のためにブログに書くべきだ、と強く勧められたが故にこうして長々と書いてみたわけである(笑)。

最後に一言。このような手続きは、ビザ申請と同様に、毎年のように変更が加えられている。したがって、私のケースもあくまで一例として捉えてほしい。オモロガシオンの手続きに興味を持った方は、実際にスペイン教育省にその都度確認されることを強くお勧めする。