昨年、建築ビエンナーレにあわせてサンパウロを訪ねた。サンパウロこそ「メトロポリス」という呼称の似合う都市だが、そこに建てられたいくつかの建築物にも大都市ならではのスケールを感じる。ニーマイヤーのエディフィシオ・コパンは、サンパウロを訪ねてそのスケールと曲線に共感を覚える。コパンは垂直方向に展開していく水平線の積み重ねが特徴的だが、一方で、大スパンの空間を獲得しようと意図する建築が多いことも印象的であった。
メンデス・ダ・ロシャによるパトリアルカ広場の大屋根は、その一例で、大スパン(あるいは、できるだけ柱をなくした空間)を得るために、アーチの上にアーチを被せたような図式をとる。これは、ラテン・アメリカ記念公園のニーマイヤーの建物にも見られる特徴で、構造上の理由と建築家の美意識がうまく融合した建築だと言える。
リナ・ボ・バルディによるサンパウロ美術館は、ポストカードに用いられる程に市民に親しまれている建築だが、美術館の巨大な箱を2本の巨大なアーチによって持ち上げている。交通量の多いパウリスタ大通りに面して立つこの建物は、キャノピーにたくさんの人を受容する空間的な余裕とともに、正面の公園と背後の傾斜地を結ぶ「視線」をつくり出している。竣工時は美術館は透明なガラスの箱であり、巨大なワンルームに作品が並べられ、通りからも中の様子が見えたようだ。
メンデス・ダ・ロシャのブラジル彫刻美術館は、それとは逆の図式をとり、「地面」となった美術館本体(つまり、美術館は地面に埋まっている)の上に大スパンの屋根のような構造が覆う。そして、その屋根と地面の間に「市場」のような空間が生み出されている。
部分と全体の設計のバランスが絶妙であり、建築によって都市を良くしようという建築家のポジティブな意志をこれらの建築から感じることができる。