08 September 2006

オビエドに到着して眠りにつくまでの話

サラマンカから途中バスを乗り継ぎ、オビエドに到着したのは午後8時過ぎ。アストゥリアス地方に入り、徐々に緑の増えていく風景に見入っていたものの、バスがターミナルに近づくにつれ見えてきたオビエドの街に僕は不安を覚えずにはいられなかった。日没後すぐでまだ明るいが、空は曇っている。きっとこの曇り空のせいで街の印象が悪いのだろう。そうであってほしい。

バスから下りる。寒い。

街の印象が悪かろうが、とにかく宿を探さなければならない。駅前からホテルやペンシオンを見つけるたびに空室があるか聞いていく。気の毒そうに、すみません、と言ってくれるところもあれば、ドアのベルの横に、conpleto、と小さな貼り紙をしているところもある。でも、部屋はありますよ、と言ってくれるところは、一つもない。

ま、あせるな、と自分に言い聞かせる。一つくらい空いているだろう。とりあえずツーリストインフォメーションに行けばすぐに済むことだ。何もあせることはない。

ツーリストインフォメーションは閉まっていた。午後8時過ぎに着いたのだから当然と言えば当然のことだ。ここで怯む前に、

「僕は探した、オビエドの街という街、ありとあらゆる宿泊施設を尋ねて回った。」

と言えるほど探しただろうか。いや全然だ。まあ観光しながら探せばいいじゃないか、荷物がちょっと重いけれど。

僕は探した。オビエドの街という街、ありとあらゆるしゅくはくしせつを。でも見つからなかった。シドレリア(シドラ酒レストラン)では地元の人や観光客が楽しそうに飲み食いをしている。でも僕は今日は駅に泊まることになりそうだ。バカンスを甘く見ていた。でもバカンスはそんなには甘くなかった。シドラといっしょだ。

駅のバルでピンチョをつまみにビールを飲みながら、やれやれと思う。まさか宿が見つからないなんてことが本当に起きてしまうとは。本当に、やれやれ、だ。

駅のバルが閉まる。時刻は午後11時。まだまだ夜は長い。しかも寒い。寝たくても寝れなそうだ。駅でも探検してみるか。長い階段がある。階段でも昇ってみるか(そのために階段はある)。僕の心理状態はそんな風だった。だから僕は階段を昇り、それから街の方を振り返って見てみた。

「P」が見える。

どうせコンプレートだろう。駅前のこんな立地のいいペンシオンが空いているわけがない。でも、、、。まあ行くだけ行ってみるか。

そして僕は運良く空いていた一室に転がり込むことができた。もの忘れの激しいペンシオンのおばちゃんとのスペイン語のやりとりには苦労したが(1秒前に言ったことを忘れ、30秒後に同じことを聞いてくるタイプ)、今日僕は寝ることができる。寝ることができると思うと、何だか寝たくないような気分になってきて、近くのバルに出かけ、コルタードを飲みながらテレビでサッカーニュースを見る。さらに宿に帰って、持ってきていた本を読む。ひと安心、ひと安心。僕はそのときニコニコしながら本を読んでいたのではないかと思う。