仕事帰りにキングでドキュメンタリー映画「Ruínas」を観る。ポルトガルに存在する廃墟に焦点をあてたドキュメンタリーで、去年のIndie Lisboaでも上映されていた。こうやってIndie Lisboaで評判の良かった映画は毎年どこかで、再上映してくれるのでありがたい。
軍艦島の写真を見たことがあれば、それほどハッとさせられるような印象的な映像ではないが、廃墟の映像に合わせてその建物にまつわるナレーションが入るところがこのドキュメンタリーの特徴だろう。レストランであれば、料理のレシピが読まれ、海沿いのホテルであればプロモーションの広告文が読まれる。なぜこの建物が存在し、放っておかれることになるのか、その政治的な背景が語られる。説明的ではなく、あくまで資料としてのテキストが読まれる。映画の終盤、昨年訪れたミナ・デ・サン・ドミンゴシュの炭鉱跡の映像が炭鉱節とともに流れる。これが映画のクライマックスの前振りとなり、スクリーンにはセラ・ダ・エストレーラの療養所が映し出される。肺結核患者の療養所という建物の性格と、山頂という自然の豊かなロケーション、そして荒廃が進むにつれて4、5層はある建物を貫いて地上階にまで光が射し込んだ建物には荘厳な雰囲気が漂っている。