取材も半分が終了。スムーズに事が進むこともあれば、そうでないこともあるけれど、全体的に見ればかなり良い調子ではなかろうか。しかも日に日にこちらとしてもコツをつかみ始めている感じがする。特に不利な形勢を逆転するクレームのつけ方とか。そんな中、いくつか「ポルトガル美」とでもいうようなものを発見した。
一つは、リスボンの眺めがなぜ美しいかということについて。僕は日本以外でポルトガルと比較する程知っている国はスペインしかないので、それと比較すると、リスボンの街は屋根がきれいという点がある。ではなぜその赤茶色をした屋根がきれいに見えるかというと、建物の外壁の淡い色使いにあるということに気がついた。通りを歩いていると、リスボンの街は渋いというか、ちょっとじみだな、という印象を受ける。外壁には黄やピンク、青、緑といった色が使われているがいずれもパステル系のものばかりだ。どうしてまたこんな淡い色を使うのだろう(リスボンには建物の色の規制がある)、それはそれでいい色ではあるけれど、と僕の頭の片隅には絶えずそういう疑問があった。同時に、リスボンは上から眺めるときれいなんだけどね、といったことをリスボンを訪ねてくる友人によく冗談めかして言っていた。結局、これらは同じことを言っているということに気がついた。外壁の淡い色と屋根の赤茶色がコントラストを為すことで、パキッとメリハリのついた風景を作るのだ。
もう一つは「陰翳礼讃」の日本的な美に通じるアズレージョの鈍い反射の具合。自然光をそれほど入れないポルトガルの室内空間において、アズレージョはわずかな光を拾って鈍く光る。曇り空のつづく秋の天候の下では外壁でも同じ効果があるが、特に室内空間において、しっくいとは対照的に、アズレージョの表面を光が走る。薄暗い日本の伝統的な室内空間において金色が鈍く光るのと質は違うが同じ原理を見ることができる。
明日以降はリスボン近郊、アゼイタオン、セトゥバル、シントラのアズレージョを取材する。
27 October 2006
取材4日目が終了
23 October 2006
明日からアズレージョ取材
時刻はすでに午前2時過ぎで、もう今日ということになるけれど、今週月曜日からアズレージョ取材が始まる。今、編集長たちを空港で出迎え、ホテルにお届けした後、近くのバーでビールを飲みながら打ち合わせをしてきた。編集長、カメラマン、建築家の3名でいらっしゃったわけだが、肩書き以上にみなさん個性的な方ばかりで楽しい取材になりそうだ。
今日は遅いのでもう寝よう(彼らのテンションの高さについていくためにも)。
22 October 2006
Volver
ペドロ・アルモドバルの最新作『Volver』を見てきた。ポルトガルでは9月公開で、見よう見ようと思いつつ、今日までお預けになっていた。彼の作品はこれが2作品目(1作品目は『Todos sobre mi madre』)だが、期待通りのいい映画だった。祖母、母、娘の3世代の女性、そして「死」がテーマの映画だが、所々のユーモアや色彩鮮やかな映像が、そのストーリーの暗さを引き立て、心に染み入ってくる。それは映画館の観客の反応にも表れていて、コメディのような親子、姉妹間のやりとりに笑いが絶えなかったが、主演のペネロペ・クルスが「Volver」を熱唱するとみなそれを食い入るように見つめ、込み上げてくるものを抑えているのが分かった。
こういうテーマの映画に対して、スペイン独特の暗さに焦点をあてたヒューマニズム溢れる美しい映画、と評されがちだ。でもこのスペイン独特の暗さとは何なのか。こういう暗さ(家族間のデリケートな問題)はどこの国にも存在していて、それがスペインの場合、普段の「表向き」の底抜けるような明るさがそこに一層の影を落とし、独特の暗さを作り出しているのだろうか。いずれにしろ、その「陰」となっている部分に(例えば映画という方法で)光を当てて照らし出す、「陰」の文化がスペインにもあるように思う。出演者の「コメディ」を演じる様子がいとおしい。
21 October 2006
史上初の3チーム出場
チャンピオンズ・リーグというのは、サッカーファンに限らずともなかなか無視できない存在だ。というのも、チャンピオンズ・リーグの試合当日、街に異変が起きる。やたらイギリス人が多くなったり、ドイツ人が多くなったりするのだ。そしてあちこちのバーで昼間からサポーター達がビールを飲みながら騒ぎ始める。去年はロシオ広場がリバプールファンによって占拠された。そしてそのせいで交通渋滞も起きていた。もちろんそれはサッカーファンでない人にとっては迷惑なだけだが、何だか1日だけワールドカップがやってきたような雰囲気になる。それが毎年繰り広げられるヨーロッパはサッカーファンにとってはやはり魅力的な場所と言えるだろう。
今回、ポルトガルからはポルト、スポルティング、ベンフィカの3チームが出場しているのだが、実はこれ、チャンピオンズリーグ史上初らしい。リスボンからは2チーム出場になるが、同一都市から2チームはヨーロッパの中でも稀な事だ。つまり今回はチャンピオンズ・リーグの試合日には必ずリスボンで試合が行われ、外国からサポーターが来ている。
今週でグループ・リーグが一回りしたが、ポルトガル勢の調子は、良くも悪くもない、と言える。前節、セルティックに完敗したベンフィカは未だ勝ち点1で敗色濃厚だが、ポルト、スポルティングはそれぞれ勝ち点3の3位、勝ち点4の2位とグループリーグ突破の確率が五分五分だ。1チーム勝ち抜くのがポルトガルの平均的な成績で、3チーム突破は難しい状況だが、2チーム突破はまだまだありえる。
特にどのチームを応援しているわけではないが、このポルトガル勢という応援の仕方はどこか僕に甲子園の九州勢という枠組みを思い起こさせ懐かしい(福岡県内には九州・山口という括りが存在する)。福岡にいて、鳥取が勝っても何とも思わないが、なぜか距離的には遠い沖縄が勝つと喜ぶという不思議な枠組みだ。
ポルトガル勢には勝ってほしいが、中村俊輔がいるという理由で、やっぱり僕はベンフィカよりもグラスゴーのチームを応援したい。ワールドカップでみじめな思いをした分を、中村の活躍で晴らしたい、というのが僕の正直な気持ちだ。
19 October 2006
ポルトガルの建築を知る
ポルトガルの建築を知るのに便利なウェブサイト3つ。
1. 『Architecture in Portugal ポルトガルの建築と街』 (日本語)
ポウザダなどの歴史的建造物改修事例が豊富。アクセス情報もある。「おどろき村」必見。
2. 『a barriga de um arquitecto』 (ポルトガル語)
建築・デザイン関係のブログ。日本のdezain.netに近い。ポルトガル建築事務所のウェブサイトへのリンクが多数。
3. 『FG+SG | Fotografia de Arquitectura』 (ポルトガル語、英語)
建築家でもあるポルトガル人写真家Fernando Guerraのウェブサイト。ポルトガルのかなりの数の建築事務所の作品を撮影している。最新プロジェクトを「雑誌より早く」知ることができる。
全部オススメです。
16 October 2006
ジローナの病院コンペの結果を見れます
以下のウェブサイトでジローナの病院コンペの結果を見ることができます。
http://www6.gencat.net/ics/trueta/
で、Nou Truetaをクリック。
以下、言語はカタランですが、何とか辿り着けるでしょう。パワーポイント風の画面が出てきますが、そこでパネルの一部を見ることができます。
プレゼンは、MAP Arquitectos(1位)、FOA(6位)、ドミニク・ぺホー(5位)、Brullet-Pineda Arquitectes(4位)、磯崎アトリエ(2位)、ウチ(3位)、
の順です。そう、結果的に3位でした。あのプレゼンで磯崎アトリエが2位ってありえないなー、ちょっと。まあ、ある意味スペインにおける彼のネームヴァリューを再確認することになりました。Porta de Gironaって、同じようなタイトルでビルバオにも集合住宅作っていますが、彼の関心は今『門』にあるのでしょうか?ぺホーはこのコンペにあまり力を入れていなかったんでしょうね。1位のマテオ案はボリューム配置等、バランスが取れている感じがします。1位に関しては妥当な評価だと思います。
11 October 2006
2位のチャンピオン
またしても、、、。またしても2位。
ジローナのコンペは2位でした。勝ったのは地元カタルーニャのJosep Lluis Mateo。こぼれ話として、審査員の間ではうちの事務所の案がほぼ全員一致で一等に押されていたらしが、ある審査員が建物の高さを問題視しはじめて、結局高さを抑えたMateo案が通ったとか。ジローナのような小都市にはちょっと勇気のいる決断だったのかな。
何はともあれ、1位と2位は大きな差。世界レベルにはありながら、なかなか突破できない世界の壁。来年にはコンペで勝ったフランス、ポワティエの劇場が竣工するので、それで名前負けすることが減るのではないか、とゴンサロ。
アソーレスのコンペ、提出まであと2日。
08 October 2006
ワシの巣という名のホテル
コンペ中でなかなか進めることができなかった取材の仕事をこの連休中にこなしている。何しろ自分のパソコンでネットができなくなっているため平日はなかなかこの仕事ができずにいた。それでマリアの息子のアントニオくんのパソコンを借りてメールをいろいろと送る。
アズレージョのある素敵な空間を撮る、簡単に言えばそれが今回の依頼された取材のテーマになっているのだが、リスボンに1年半以上いるにもかかわらず、なかなか思い当たらないものだ。結局リスボン観光局の力を借りて、約20の事例を集めることができたのだが、これが自分も興味の湧くような事例ばかりだ。
まだ訪れたことのない事例を日中に訪ね、午後家に戻ってから日程を組んでみる。実7日間の滞在で20事例、間にポルトも訪ねるからかなりハードな日程だ。とりあえずこれを日本へメールする。そして彼らが泊まりたいと言ってきたホテルに予約の電話を入れる。このホテルがまたとんでもない。Ninho das Aguias、ワシの巣という名のペンションは、サン・ジョルジェ城の壁にへばりつき、長い螺旋階段があり、名前の通りの格好をしている。リスボンには眺めのいい所は数知れぬほどあるけれど、このペンションからの眺めには正直たまげた。口があんぐりと開いたままになった。他がポルトガルの中華料理とすれば、ここは本場中国の中華料理というくらいパンチ力の差がある。とにかくリスボン全体を一気に眺め渡すことができて、他とは視線の高さが桁外れに違う。もっともこのペンション、いろいろとサービスにはいわくがついているようだ(僕も予約を入れるときはけんか腰で話した)。しかし、その超絶の眺めがサービスの質など気にさせないらしい。恐るべし。
アズレージョという視点でリスボンを再度見渡し始めたのだが、リスボン、まだまだ奥が深い、という印象だ。Palacio Belmonteなんて凄すぎる。これについてはまた別の機会に書こう。
