22 October 2006

Volver

ペドロ・アルモドバルの最新作『Volver』を見てきた。ポルトガルでは9月公開で、見よう見ようと思いつつ、今日までお預けになっていた。彼の作品はこれが2作品目(1作品目は『Todos sobre mi madre』)だが、期待通りのいい映画だった。祖母、母、娘の3世代の女性、そして「死」がテーマの映画だが、所々のユーモアや色彩鮮やかな映像が、そのストーリーの暗さを引き立て、心に染み入ってくる。それは映画館の観客の反応にも表れていて、コメディのような親子、姉妹間のやりとりに笑いが絶えなかったが、主演のペネロペ・クルスが「Volver」を熱唱するとみなそれを食い入るように見つめ、込み上げてくるものを抑えているのが分かった。

こういうテーマの映画に対して、スペイン独特の暗さに焦点をあてたヒューマニズム溢れる美しい映画、と評されがちだ。でもこのスペイン独特の暗さとは何なのか。こういう暗さ(家族間のデリケートな問題)はどこの国にも存在していて、それがスペインの場合、普段の「表向き」の底抜けるような明るさがそこに一層の影を落とし、独特の暗さを作り出しているのだろうか。いずれにしろ、その「陰」となっている部分に(例えば映画という方法で)光を当てて照らし出す、「陰」の文化がスペインにもあるように思う。出演者の「コメディ」を演じる様子がいとおしい。