切手に見る世界建築 -ポルトガルの現代建築-
今夏、リスボンでポルトガル初の国際建築展、第一回リスボン建
築トリエンナーレが開催され、それを記念して、1974年以降に建設されたポルトガルの建築を題材とした切手集が発行された。ここでは昨年の第1集
(1974-1995年)に続き今年発行された第2集(1996-2005年)の切手10枚中6枚、および、トリエンナーレの会場となったポルトガル・パ
ヴィリオンをあしらった記念シートを紹介する。
1974年とは、ポルトガルが革命により、1933年より続いた「エスタード・ノヴォ(新国家)」と呼ばれる独裁体制に終止符を打った年である。革命前のポルトガル建築は、政治の中心地リスボンではなく、首都から離れ、自
由な雰囲気のなかにあった商都ポルトの建築家たちが先導した。第二次世界大戦後、ポルトガルにモダニズムを取り入れたのもポルトの建築家たちであり、リスボンの建築家たちは、それより幾分遅れて、国家主導で行われた首都改造の過程で、フランスのマルセイユにあるユニテ・ダビタシオンに影響を受けたモダニズ
ム建築を導入していった。
こうしたモダニズムへの反動として、1955年から1960年にかけて「ポルトガル地域建築調査」が実施された。これは、1956年に最後のCIAM(近代国際建築会議)が行われたのと時を同じくしている。この調査は当時のポルトガル建築家協
会の主導で行われたが、「ポルトガルらしい建築」の発見を目論んだ政府のバックアップも受けていた。しかし調査内容をまとめて出版された『ポルトガルの大衆建築』(1961年)には、地域の数と同じ数だけの伝統建築を発見することになり、政府の思惑どおりにはならなかった。
その頃、ボア・ノヴァのティー・ハウスでデビューしたアルヴァロ・シザは、「伝統主義者になるのでもなく、ルーツを無視するのでもなく」と当時の建築界の気
風を告白しているが、この切手シリーズを眺めていると、その流れは現代のポルトガル建築界にも引き継がれているように思う。
1:リスボン港海上管制塔|ゴンサロ・ビルネ|ポルトガル/2007年/ポルトガルの現代建築シリーズ2
2:イリャヴォ海の博物館|ARXポルトガル|同上
3:ベレン宮殿公文書センター|カリーリョ・ダ・グラサ|同上
4:視覚芸術センター|ジョアン・メンデス・リベイロ|同上
5:ブラガ市営スタジアム|エドゥアルド・ソウト・モウラ|同上
6:シネス芸術センター|アイレス・マテウス|同上
7:ポルトガル・パヴィリオン|アルヴァロ・シザ|ポルトガル/2007年/リスボン建築トリエンナーレ記念シート
(『建築雑誌』10月号、「連載|切手に見る世界建築―22」より抜粋)
Portuguese Contemporary Architecture - World Architecture on Stamps
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