04 May 2011

サッカーにクライシスはない

20時30分に帰宅する。どうなってるんだ、今日のバルサ対レアル戦は?と早速テレビの電源を入れる。すると、中継されるはずの試合の代わりになぜかニュース番組をやっていて、「これからソクラテス首相の会見が始まります」とテレビのアナウンサーが言う。

会見の内容はおおよそ予想はついたが、欧州委員、欧州中央銀行、IMF(ポルトガルでは最近この3者を合わせて"トロイカ"と呼んでいる)によるポルトガルへの金融支援が総額780億ユーロで合意に至ったということだった。"トロイカ"との合意に至った内容は現時点で全ては明らかにされていないが、計画は3ヵ年で、財政赤字を今年度中にGDP比5.9%、2012年度には4.6%、そして2013年度に4.5%まで削減することを目標とする。既に辞意を表明したものの、次の6月の総選挙まで暫定でその任務を遂行するソクラテス首相は、「この計画は既に提案済のPEC-IV(安定成長計画)の内容で十分であり、これ以上の新たな緊縮財政プログラムを組む必要ない」ということを強調。PEC-IVは3月に国会で野党に否決され、それがポルトガルの金融支援要請の引き金となっていた。

「国有銀行や社会保険庁の民営化の必要もない。」
「公務員のさらなる給与カットもない。」
「夏期休暇・クリスマス休暇交付金(休暇前に支給される各給料1カ月分の助成金)のカットもない。」

と、このポルトガル人も注目するバルサ-レアル戦のハーフタイムに、ソクラテス首相は存分に政治的アピールをしていった訳だ(レアル・マドリードには監督のモウリーニョを始め、ポルトガル代表3選手、ベンフィカから移籍したディ・マリアが主力として活躍するため、この1戦の注目度は高かった)。さらに興味深いのは、ソクラテス首相の会見がこのハーフタイム中にきっちりと終了し、テレビは後半開始ぴったりに中継を再開することができたことだ。中継再開前にアナウンサーが放った一言に吹き出してしまう。

「この件に関しては後半終了後に詳しくお伝えします。」

ポルトガルにサッカーより大事なものはない。