26 February 2009

モウラォン


モンサラーシュから見えた、湖に浮かぶ橋を渡ってモウラォンへ。その途中に見える巨岩の転がる湖の風景は圧巻である。モウラォンへの目的はただ一つ、フランシスコに薦められたレストランで昼食を取ること。モウラォンの町自体は面白みに欠けるが、城はいい。昨年の同じ時期に訪れたモンテモール・オ・ノヴォの城を思い出す。放っておかれた城と、そこに咲き乱れる黄色い花。アレンテージョ地方に訪れるのは今が一番の季節であると確信する。温暖な気候の中、雄大な風景を眺めるのは何とも気持ちが良い。

城を訪ねた後、町の人に場所を訊ねながらレストランへ向かう。たくさんの人が通りに溢れて中に入るのを待っている。入り口付近にカウンターがあって、そこで皆ワインを飲みながら順番を待っている。とりあえず店の主人を探して名前を伝える。もちろん、こんな田舎町で日本人の名前など覚えてくれるはずはなく、中国人と書いとくからな、と言われて順番を待つ。まあ自分以外に中国人らしき人は見当たらないので、きっと順番は回ってくるだろう。マスターはまあこれでも飲んで気長に待ってろとばかりに小さなグラスに入ったワインを僕に渡す。そう、ここは酒蔵でもあるのだ。このワインが何とも素朴でうまい。

ちょうどこの日はカーニバルの日で、通りではたった一組のグループが伝統的と思われる歌を歌い、ある一定の規則に従いながら踊り、行進している。ついにはお店の中にも入って来て、狭い店内で同じ歌と踊りを繰り返している。ワインの入った小さなコップを持って来て、平日ならすぐに食えるんだがな、とマスターも気を使ってくれる。1時間近く待った後、ソパ・デ・パネーラを食べる。言うなれば、ソパ・デ・カサォンの肉バージョンである。パンを皿の底に並べ、その上に豚肉やチョリソを乗せ、スープを上からかけて食べる。もちろん、赤ワインとともに。絶品である。

待っている間、マスターはスペインの詩人アントニオ・マチャードの詩を朗読して聞かせてくれたが、それはまさに旅を続ける上での励ましの言葉になった。

"Caminante no hay camino, se hace camino al andar..."