15 September 2008

ピーター・ズントー展

「Peter Zumthor -Building and Projects- 1986-2007」展を見て来た。今月7日からリスボンのLXFactoryで開催されており、何でもズントーの作品をこれだけ一堂に集めた展示は初めてのことらしい。「EXPERIMENTADESIGN 2009」の一環であること以外、なぜリスボンで開催されたのかは不明だ。しかし、理由がどうであるにしろ、巨匠の一人に数えられる建築家の展示を見る機会があるのはいいことだ。

僕はズントーの建築を訪ねたことも、じっくりと作品集を眺めたこともなかったので、これは作品を知るいい機会だった。会場に入ってすぐのホールに、ブレゲンツ美術館などのスケールの大きな模型が5つ並ぶ。ここで展示された模型には、正直あまり惹かれなかった。実際の建物が縮小された、というよりも、小さなスケールの模型をそのまま拡大したもの以上ではないように感じたからだ。奥に進むと、「six screens, six projectors, six cameras」という、ズントーの作品を6カ所から定点撮影し、プロジェクターの配置を現場に実際に置かれたカメラの配置と同じにしてスクリーンに映し出す、というインスタレーションをやっていた。試み自体はおもしろいと思うが、あまり動きのない建築を対象とした映像では、実際に映し出されたものを見てもあまりピンと来なかった。

最後は4階にある29のプロジェクトの図面と模型の展示。会場に入って、これが見たかった、と思った。学生の卒業設計展のように、展示された模型はプロジェクト毎に使っている材料もスケールも出来映えも異なり、見ていて飽きなかった。ズントーによる図面のスケッチが一番見応えがあった。それはパースでなく、プランなのだけれど、クレヨンを横にして引いてスペースを表現しているのがいいと思った。高齢者用住宅のプランが中でもいいと思った。あと、興味深かったのは、ブレゲンツ美術館の初期案の模型が展示されていたこと。こういう設計の過程が見えるような展示は、実際に建築設計をやっているものにとって大変興味深い。やはり、ブレゲンツは現物を見てみたい。実際に美術館のプロジェクトに実務でいくつか参加してきたからこそ、あの光の取り入れ方の仕組みを見てみたいと思うし、あの空間を体験してみたいと思う。

それにしても、つくづく建築展というのは難しいものだと思う。作品を並べただけでは作品集とそう変らないし(もしくはそれ以下)、ちょっとスケールの大きな模型を展示したところで、現物にはかなわない。その展示スペースをうまく使って、そこに足を運ぶだけの価値のある展示にするには一工夫が必要だ。そういう意味で一階の展示がいまいちだった。

(「EXPERIMENTA」は1999年に始まったビエンナーレ形式のデザイン一般に関するイベントで、2007年は建築トリエンナーレとかぶったために中止になった。)