25 May 2008

日蝕

随分前にFnacで何気なく購入していた、ミケランジェロ・アントニオーニの「日蝕(L'ECLIPSE)」を見る。何をやっても満たされない女性をモニカ・ヴィッチが演じる。映画自体は淡々とした調子で進むけれど、何気ないシーン一つ一つが印象的だった。アラン・ドロンとモニカ・ヴィッチが別れた後、ラスト10分くらいは会話もなく、延々と情景描写が続く。バスを待つ人、バスから降りてくる人、ベランダから外を眺める人、夜になって点灯する街灯。最後に「FINE」の文字が現れるまで、それがもうすぐ現れるということを確信しつつ、スライドショーのような情景描写が繰り広げられる。約束の時間の午後8時は、普段と変わりなく過ぎて行き、結局二人は再会することなく映画は突然の幕切れを見せる。我々はそのスライドショーを「終わり」と言われるまで見続けなければならないのだけれど、逆に言えば、時間は我々とは関係なく進んで行く、ということを見せつけられる。メッセージは、役者のセリフからではなく、時間の経過をもって伝えられる。